【初心者向け】夏野菜の種まき 失敗しない5つのポイント

トマトやキュウリなどの夏野菜は家庭菜園では市販の苗を購入することが多いと思います。一方、自然農の場合、自家採種を繰り返すことで無肥料でも育ちやすくなってくる特徴があるため、自家採種した種を使うには、育苗の技術が必須となります。

今回は育苗の中でも種まきに絞って初心者の方でも失敗しないためのポイントを解説します。

目次

用意するもの

種が無くては始まりません。育てたい品目、品種を選びましょう。自然農で育てる場合は、ミニトマト、ピーマン、キュウリなどは育てやすいです。大玉トマト、ナスは必要な養分が多いため、無肥料ではやや上級者向けと言えます。これらも、しっかりと施肥をすれば、比較的簡単に育てられます。

種には、交配種(F1)と固定種があります。交配種は異なる品種を掛け合わせた雑種で、両親の優れた形質を受け継ぎ、生育が揃いやすい特徴があります。自家採種をする場合は、2代目には劣性遺伝の形質が出ることがあります。

固定種は代々同じ品種から採種を続けたもので、安定して自家採種を行うことができます。固定種の種は、野口のタネたねの森などで購入することができます。

固定種とF1の違いについて、詳しくはこちらをご参照ください。

あわせて読みたい
固定種とF1 市販の種には固定種とF1というものがあります。それぞれの特徴と自然農での使い方について解説します。 【固定種とF1の違い】 固定種は代々同じ品種の種を取り続け形質...

培土

次に必要となるのが培土です。培土とは苗を育てるための土です。自然農を実践する場合、畑の土と自家製の堆肥などを混合して培土を用意したいです。しかし、小規模の場合にはそこまでするのは難しいので、ホームセンター等で市販されている種まき用の土で十分だと思います。

バケツまたはバット

用意した培土をはじめに水で湿らせる必要があるため、土をかき混ぜるためのバケツまたはバットを用意します。

容器(ポリポット、セルトレイ)

種をまくための容器です。ポリポットは様々な大きさのものが市販されています。育てる作物の種類により大きさを選びます。基準は定植するときの苗の大きさです。ナス、トマト、ピーマンは7.5cmのポットが適しています。キュウリなどのウリ科は双葉や本葉がかなり大きくなるため、10.5cm程度あった方が、日当たりが確保できます。一方、バジル、シソなどのシソ科、アブラナ科の作物は、双葉が小さく、大きくなる前に定植が可能なので、3.5cmのポットや128穴のセルトレイが利用できます。

農家さんが大量に育苗する場合には、まずはセルトレイである程度の大きさまで育苗し、そのあと大きめのポットに鉢上げする方法もあります。

移植ごて

培土と水を混ぜたり、ポットに土を入れるのに使用します、手で作業しても問題ありません。

霧吹き

種まき後の水やりに使用します。じょうろなどで水やりすると、種の周りの土が動いてしまうことがあるため、苗の数が少ない場合には霧吹きで丁寧に水やりする方がおすすめです。

その他あったら便利なもの

保温育苗器

発芽、育苗中は温度管理が重要になります。育苗器があれば、比較的簡単に温度管理を行えます。詳しくはこちらの記事を参照ください。

あわせて読みたい
発芽育苗器の使い方と効果の検証 夏野菜の苗を自分で作るのは難しく感じます。自然農では自家採種した種を使うことが好ましいので、育苗技術もマスターしたいところです。発芽から育苗までを強力にサポ...

スチールラック

部屋の中で育苗する場合、時間帯によって日当たりの良い場所が変わると思います。その場合、キャスター付きのスチールラックに苗を乗せておくことで簡単に場所を移動でき、長時間日照を確保することができます。

プラスチックトレイ、底面吸水トレイ

ポリポットで育苗する場合、ばらばらだと扱いが手間であったり、転倒させてしまうリスクがあるため、ポリポットをきれいに収納できるプラスチックトレイが市販されています。使用するポリポットの大きさに合わせて準備しておくと便利です。

また、底面吸水トレイも便利です。これについては、水やりのところで述べます。

照明

室内で育苗する場合、最も気にしないといけないのが、日照不足による徒長です。いったん徒長させてしまうと、挽回させることが難しく、最悪種のまき直しになってしまいます。

窓際で十分な日照が得られれば良いのですが、雨や曇りなどで日照が不足する場合には、スチールラックにLED照明をつけておくことで、少しでも徒長を防ぐことができると考えています。

下の写真が、私の育苗スタイルとなります。このあと、7.5cmポットに鉢上げしています。ここまでやるかは趣味の問題だと思いますが、ご参考にしていただければと思います。

種まきの時期

準備がそろったら、いつ種をまくのかを決めます。種まきの時期は、定植する時期と育苗期間によって決まります。例えば定植が5月5日、育苗期間が40日であれば、種まきは3月26日となります。

定植時期は、その作物の寒さに対する抵抗性により決めます。栽培する地域によって変わってくるので、地域の平均気温などで判断します。育苗期間は品種によって決まってきます。詳しくは「ちょこっと自然農」の動画で解説されていますので、ご参考ください。

種まきの手順

では、いよいよ種まきの手順を解説します。

土を湿らせる

まず、培土をバケツまたはバットに開け、水を加えて十分に撹拌します。土の状態にもよりますが、土10Lに対して、水を500mL程度が目安です。撹拌が十分でないと、乾燥した部分が残ってしまい、発芽に影響します。仕上がりとしては、土を握って形がまとまる程度です。

土を容器に詰める

次に、土を容器に詰めていきます。ポイントとしては、容器内に空洞を作らないようにすることです。容器に土を入れた後、指で土を押し込みます。あまり固く締めすぎると根張りに影響してしまいますが、軽く押し込んでもそれ以上土が沈まない程度が目安です。

また、ポリポットの場合には、上面いっぱいまで土を入れず、上部1cm程度は空けておくようにします。これはウォータースペースと言って、水やりをしたときに水を貯える場所となります。

種をまく

ポット1つあたり、何粒の種をまくか決めます。発芽率、手持ちの種の数、育てたい苗の数を考慮します。種が豊富にあって、発芽率が良くない場合には、1ポットあたり2~3粒まきます。種が貴重な場合には1ポット1粒となりますが、発芽しなかった場合には、欠株となってしまいます。

ポットの上に、種をまく数の分の穴をあけます。複数まく場合には少し間隔を空けておくと、発芽後の間引きがやりやすいです。

穴の深さは、種の厚みの2~3倍と言われています。あまり厳密でなくても発芽してくれると思いますが、深さをそろえておくと発芽時期がそろうので、その後の管理がやりやすくなります。

そして、一粒ずつ丁寧に種を降ろしていきます(自然農では種を降ろすと言います)。

最後に、覆土鎮圧します。覆土は土を上からかけてもよいし、穴の周囲の土をつまむことでもよいです。重要なのは、しっかりと鎮圧することです。鎮圧が甘いと、発芽した時に種の殻をつけたまま地表に出てきてしまいます。そうすると双葉が上手く展開、成長せず、その後生育に影響します。しっかりと鎮圧することで種が土の中で固定され、双葉が殻から自然に抜けて出てきます。

水やり

種を降ろした後は水やりをします。じょうろなどで勢いよく水やりをしてしまうと、表面の土が動いてしまい、種が露出したりすることがあります。私は数がそれほど多くないので、霧吹きで水をかけます。ただし、表面が湿る程度では十分ではないので、しっかりと土の中まで水が染み込むまで霧吹きしますので、多少握力が必要です。

その後新聞紙をかぶせて湿り気を保つのが一般的の様です。この場合、発芽したら直ちに新聞紙を取り除かないと徒長してしまうので注意が必要です。私は新聞紙は使わず、土が乾く前に軽く霧吹きをするようにしています。これでも問題なく発芽しています。一番重要なのは乾かさないことです。

発芽後はポット内に根が張っているため、上面からの水やりは止め、底面吸水に切り替えます。底面吸水トレイの上にポットを置き、トレイに水を注ぎます。毛細管現象により、土の中にも水が染み込んでいきます。根の下側の方が水分が多い状態を作ることにより、根のスムーズな成長を促すと考えています。ただし、底面吸水では追いつかない場合には、上面から潅水する場合もあります。

まとめ

夏野菜の育苗に向けた種まきの方法をまとめました。ポイントとしては以下の5つとなります。

  1. 種まきの時期は、定植時期と育苗期間から逆算して決める。
  2. ポットに土を詰める前に十分に湿らせる。
  3. ポットの上面まで土を詰めず、ウォータースペースを確保する。
  4. 覆土は種の厚みの2~3倍でしっかりと鎮圧する。
  5. 発芽までの期間は土を乾かさない

なお、十分に暖かくなってから(4月下旬以降)種まきを行う場合には、育苗しないでも直播きで育てることもできます。この場合実が成り始めるのが遅くなるため、収穫期間が短くなってしまいます。育苗は日本の気候であっても夏野菜をできるだけ長く収穫するための技術と言えます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事を参考に夏野菜の育苗に挑戦していただければ大変うれしく思います。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次