固定種とF1

市販の種には固定種とF1というものがあります。それぞれの特徴と自然農での使い方について解説します。

目次

固定種とF1の違い

固定種は代々同じ品種の種を取り続け形質が安定(固定化)したものです。一方F1は異なる品種の両親を掛け合わせ、互いの優れた形質を受け継がせることを目的とした種のことを言います。雑種の1代目という意味でF1と呼ばれています。

市販の種の見分け方としては、固定種では〇〇育成と書いてあり(〇〇は種会社の名前)、F1は一代交配または〇〇交配などと書いてあることが多いです。野口種苗研究所のように、固定種専門の種屋さんもあります。

メリット、デメリット

固定種とF1のメリットとデメリットを比較してみましょう。

形質の安定性

形質の安定性とは、発芽までの時間、成長速度、できた作物の均一性などがどれだけそろっているかです。

F1は優性遺伝の形質を受け継ぐため、形質が非常に安定します。このメリットとして、同時期に播いたものは同時期に収穫でき、その形もそろっています。つまり大規模な作付けを行うのに向いていると言えます。ただし、気温や日照、降水量などがその品種に適さない環境になってしまった場合、全体的に悪影響を受けることになります。ハウス栽培により理想的な環境を整えることで回避できます。

一方、固定種は代々種を採り続けているため、遺伝的多様性を持っているのが特徴です。発芽のタイミングや、成長速度はばらつきが大きく、収穫物の形、大きさも不揃いであることが多いです。一斉に収穫できないし、箱詰めなども形がそろわないため、小規模の家庭菜園や、直接販売などが向いていると言えます。天候が合わなかった場合でも、遺伝的多様性により、その環境でも育つことができる個体が存在する確率が高まるため、全滅は免れやすいと考えられます。

自家採種

固定種は両親が同品種であることから、採種してその種を播くと、親とほぼ同じ形質になります。また、味や形など好ましい形質の個体から採種することで、その土地、気候に合った遺伝子が選抜されます。採種を繰り返すことで、自分の畑に適した作物にすることができます。

F1でも採種すること自体は可能ですが、それを播くと、メンデルの遺伝の法則により、1/4の確率で望まない形質が現れます(劣性遺伝)。したがって、安定した形質を得るというF1のメリットを享受するためには、毎年種を買う必要があります。しかし、F1であっても、優性遺伝の形質の個体を選抜して採種することで、次第に劣性遺伝の確率が下がっていき、9代程度繰り返せば、形質が安定すると言われています(固定化)。例えば、野口種苗研究所で販売されている固定種のアロイトマトという品種は、F1の桃太郎を選抜し、固定化したものだそうです。

ただし、F1の品種を開発するのは莫大な労力と費用がかかっていることが多く、これを保護するために、品種登録されていることがあります。登録されている品種は自家採種し増殖することが禁じられているので注意が必要です。品種登録されていないものや、登録期限が過ぎたものは、F1であっても自家採種が可能です。品種登録されているかどうかは、農林水産省の「品種登録データ検索」で調べることができます。

自然農ではどちらを使うべき?

自然農では亡骸の層を大事にし、生態系を豊かにしていくことが基本的な考えのため、固定種を自家採種し、土や環境の変化に適応させていくやり方が相性が良いと思います。自然農の本でも固定種、自家採種を勧めるものが多いです。

一方、自然農でF1はダメかというと、そのようなことはなく、例えば収穫の端境期を埋めるために、短期間で育つ早生の品種を使うなど、F1の安定した形質をうまく利用することも有効だと思います。

どちらかが絶対に良い、悪いということではなく、それぞれの特徴を理解し、自分に合った方法を選ぶことが重要と思います。ちなみに私は固定種派で自家採種しています。一番上の写真は、自分で採種したオクラ、四葉キュウリ、アズキの種です。

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