自然農とは
ここでは、自然農って何?ほかの農法とはどう違うのという疑問に解決していきます。
自然農、有機農法、慣行農法は、ざっくり以下のような特徴を持ちます。
化学肥料 | 有機肥料 | 農薬 | 除草剤 | 耕起 | |
自然農 | 使用しない | 使用しない | 使用しない | 使用しない | しない |
有機農法 | 使用しない | 使用する | 天然由来の 農薬を使用 | 使用しない | する |
慣行農法 | 使用する | 使用する | 使用する | 使用する | する |
自然農とは、肥料、農薬、除草剤を使わず、草や虫を敵としない、生命の営みに寄り添って作物を生産する活動です。また、多くの場合、耕すこともしません。
またん、自然農とは畑の外から持ち込まず、持ち出さない農法とも言われます。刈った雑草や作物残渣(収穫物以外の残り)などは、土に返し次の生命の糧にすることで、生命を循環させていきます。
一般的には、施肥や除草をしないとまともな野菜ができるはずはない、農薬を使用しないと、病気や害虫により作物がやられてしまうと思われがちです。
しかし、自然農で立派な作物を生産される農家さんもいます。私も小規模ながら自然農を実践し、少しずつ収穫できるようになってきました。
それでは、なぜ自然農で野菜を育てることができるのか解説したいと思います。
なぜ自然農で作物が育つのか
植物は水と一緒に養分を吸い上げます。したがって、養分は水に溶けている必要があります。植物の根は微生物と共生していて、植物が光合成でつくった有機物(でんぷんや糖)を微生物に供給します。そして、微生物は植物からの有機物を利用することで、土の中の無機物(リン、カリウム等)を植物が吸収しやすい形にして植物に供給します。
上記は作物や雑草にかかわりなく行われます。自然農では草は刈りますが、根を残すことで、植物と共生する微生物が多くなり、作物が育ちやすい環境になっていきます。
慣行農法では土を耕すので、上記の微生物の活動が維持できず、作物が十分に養分を吸収できなくなります。したがって、人間が肥料として作物が吸収しやすい形で養分を供給する必要が出てきます。これが肥料をやらないと作物が育たない原因です。耕さないことと肥料をやらないことは密接な関係があるのです。
有機農法では耕して減ってしまった微生物を補うために、微生物のエサになる有機肥料を畑に投入します。しかし人為的に施されるため、何をどれだけ入れるかによって、養分のバランスが変わるため、作物や微生物にとって過不足なく養分を供給するのは熟練の技が必要となります。多くの場合は養分過多になりやすいです。ある養分を必要十分に与えると別の養分が多くなりすぎるからです。養分が多すぎると、人間で言うメタボのようになり、虫や病気にやられやすくなります。慣行農法では農薬をかけて解決しますが、有機農法では使用できる農薬が天然由来のものに限られているため、防除に大変に苦労することになります。
自然農では、自然の営みに沿っているため、作物は健康に育ちます。健康な野菜は虫や病気にやられることが少ないです。また、味が良く栄養価も高いと言われています。
草や虫とどう付き合うのか
自然農では草を根元で刈って作物の周りに敷いておきます。草を刈るのは、作物に十分な日照を確保するため、それを敷くのは土の乾燥を防ぐとともに、虫や微生物のエサにするためです。これにより微生物の活動が活発になり、そのエネルギーは作物に還元されます。草刈りは大変な作業ですが、命の循環の一部と思えば苦にならなくなります。
自然農で健康に育った作物は病虫害にはやられにくいですが、完全に防げるわけではないです。少し虫が来たからと言って、彼らを殺してしまうことはしません。作物を食べにくる虫もいれば、その虫を食べる虫や鳥などもいます。作物を食べる虫を除去してしまえば、それを食べる虫も来ないため、結局また作物を食べる虫が来ることになります。作物が食べられたら、よく観察し、食物連鎖に任せることが、自然に沿ったやり方だと考えます。
自然農は万能か
これまで自然農の良いところばかり書いてきました。しかし、自然農が絶対でほかの農法がダメだとは考えていません。自然農は土の中や圃場全体の生態系のバランスがとれるまで、うまく育たないこともあります。自然農を始めるときの畑の状態にもよりますが、自然農で十分な品質と収量が得られるのに3年程度かかるとも言われています。
一方、慣行農法では十分に耕し、適切に設計された施肥、防除を行うことで、品質、収量とも安定します。また、機械化することで、大きな面積でも作付できるため、事業としても安定します。ハウスにより年中安定した供給も可能です。私たちがいつでも好きな野菜を安価に入手できるのは、慣行農法のおかげです。
有機農法は施肥の管理がとても難しいと思います。養分が過多になると病虫害が発生しやすくなりますが、農薬を使用できないので、防除に大変な苦労が必要になるのではないかと思います。一方、施肥管理がうまくいき健康的育った野菜は、本当に味が良いと聞きます。何を肥料として入れるかにより味が変わってくるのも、有機農法のおもしろさなのかもしれません。
なお、有機JAS認証に関しては、疑問に思うところが多いです。これに関しては別の記事で書いてみたいと思います。なお、現在有機農法に取り組んでおられる農家さんを否定するつもりはまったくありません。
結局、どの農法が良い悪いということではなく、自分の生き方に合ったやり方を選択すればよいと思います。私は自然農の考え方に惹かれ、自分でも実践してみたいと思い、取り組んでいます。最近では自然農の野菜をネット通販等で入手できるようになってきましたが、スーパーなどでも普通に売られるような時代になれば、素晴らしいことと思います。それに向けて少しでも役に立てればと思っています。そのための情報をこのブログで発信していきたいと思います。
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