私が週末だけ畑仕事をしているという話をすると、真っ先に聞かれる質問が「水やりはどうしてるの?」というものです。「水やりはしたことがないです」と言うと大変驚かれます。自然農で水やりが要らない3つの理由を解説します。
自然農なら水やり不要
私は畑を始めてから育苗時を除いて水やりをしたことがありません。しかし、どれだけ日照りが続いても、水不足で枯らしたことは無いです。2020年の夏は1カ月くらい晴れが続きましたが大丈夫でした。なぜ水やりをしないでもよいかは、自然農の特徴である草マルチ、無肥料、自家採種、不耕起が互いに深くかかわっています。
草マルチによる保湿
自然農では刈った草をその場に敷いておきます。それだけで、きれいに草を刈って土が露出したところよりも乾きにくくなります。また、敷いた草はやがて朽ち、土になっていきます。そこには、虫やミミズや菌類などの働きがあり、土は団粒構造となります。
団粒構造とは、細かい土の粒子が、生き物の活動の産物である粘液等により互いに結びつき、少し大きな粒の集合体になったものを言います。粒が荒いので、通気性がある一方、もともとの細かい粒子がくっついている隙間には水を保つことができます。つまり、通気性と保水性という相反することを同時に成り立たせるのが、団粒構造の特徴です。
したがって、草マルチにより乾きにくいだけでなく、土の構造そのものにより、水を保持することで、植物は水分を確保することができます。
根が発達
根は水分の多いほうに伸びていく性質があります。晴天が続くと、地表に近いほうが乾いていき、地中深くなるほど水分が多くなります。つまり、根は地中に向かって伸びていきます。
ところが、頻繁に水やりを行うと、表面の方が水分が多く、根は地中深くまで根を伸ばさなくなります。この状態で水やりを止めてしまうと、乾いた表層部分にしか根がないため、十分な水分を吸収することができなくなり、枯れやすくなってしまいます。
さらに、自然農では根毛が発達すると言われています。無肥料なので、微生物との共生により土中の養分を吸収する必要があるためと考えられます。無肥料でもよく育ったものから採種を繰り返すと、より根が発達しやすくなります。
また、耕さないことにより、根穴構造が発達します。不耕起の畑に植えた作物の根は、根穴構造を使って地中深くまで根を伸ばすことができます。耕してしまうと、耕した部分とその下の層で土の性質が大きく異なるため、それ以上深く根を伸ばすことが難しくなります。不耕起栽培を長く続けるほど、地中深くまで根が張り、水やりが不要になっていきます。
自然農を続けていると、根が1.5メートルの深さまで到達する場合もあるようです。
蒸散を抑制
最後は副次的な要因ですが、水やりをしないことにより、葉から水分の余計な蒸散を防ぐことができます。晴天時に水やりを行うと、特に葉に水をかけた場合、植物は雨が降ってきたと認識し、葉の気孔が開き水分が蒸散してしまいます。雨天時ほど土に水分を含んでいないため、植物の中の水分が不足してしまいます。
水をやらないことが自然に沿ったやり方
晴れているのに水をやるのは不自然な行為と言えます。晴れが続いても生き延びる術を、植物は自然に身につけています。自然の仕組みを理解し、余計な手出しをしないことで、豊かな実りが得られるのだと思います。