不耕起栽培 -畑を耕さないとどうなるか-

自然農では耕さないことが基本です。そもそも、慣行農法や有機農法はなぜ耕すのか、耕さないとどうなるのか、整理しました。結果、耕さなくても、耕す目的を達成できることが分かりました。

目次

何のために耕すのか

慣行農法や有機農法では、なぜ耕すのでしょうか。主に以下の理由と考えられます。

  1. 土を柔らかくする
  2. 肥料をすき込む
  3. 雑草をすき込む

以下に耕さないとどうなるかを述べていきますが、結果として上記の目的はいずれも達成できることがわかりました。

耕さないとどうなるのか

根穴構造の発達

自然農では、草の地上部は刈りますが、根はできるだけそのままの状態で残しておきます。また、収穫を終えた作物も、地上部だけを刈り取り、根は残します(根菜や地下にできる野菜はこの限りではないです)。

そのあと耕さないでいると、根はやがて朽ちてなくなりますが、根のあった場所は穴として残ります。これを根穴構造と言います。草や作物の根が繰り返し育っては朽ちることで、根穴構造はより複雑になり発達します。もしここで耕してしまうと、この構造がばらばらに崩れてしまいます。

自然農では表層に亡骸の層という肥沃な層があり、地中深くに行くほど栄養分は少なくなります。この結果、植物の根は表層付近は養分を吸収する根が水平方向に広がり、地中には水を吸う根が深くまで伸びていき、役割分担ができます。

自然農では通常潅水は行いませんが、そうすると根は水を求めてより地中深くまで伸びていきます。特にイネ科の植物はこの働きが顕著で、ライムギやソルゴーなどを植えることで、2m以上も地中に根を伸ばすと言われています。深くまで根を伸ばすことで、干ばつにも耐えられるし、強風でも倒れにくくなります。

発達した根穴構造により、土が柔らかくなります。地上に近いほど柔らかく、地中に行くにしたがって、徐々に固くなります。耕した畑の場合、耕した部分とその下の層(耕盤層と言います)で、極端に土の硬さが変わるため、根が固い層まで伸びにくくなります。

結論1: 耕さないと土が柔らかくなる

有機物と微生物を土中に供給

前述のように、耕さないと根が深くまで伸びていきます。植物は根から有機物を分泌します。微生物はこの有機物を養分として活動することができます。この活動により、植物は土中の養分を吸収できるようになります。つまり共生関係です。これは根の表面の数mmのところで非常に顕著で、根圏と呼ばれています。

また、根が枯れた後はミミズや様々な生き物がこれを食べることで、土が豊かになります。つまり、耕さないと、土の中に有機物や微生物を供給することで、作物が育つために必要な養分を供給できます。

結論2: 耕さないと、土中に養分を供給できる

雑草の軽減

多くの雑草は土の表面付近の種から発芽します。土中深くの種は発芽せずその機会をうかがっています。これは、多くの種は発芽に光が必要だからと考えられます。

耕さないと、はじめのうちは表面付近の種が発芽しますが、種をつける前に刈り取れば、次第に草の量が減っていきます。しかし、ここで耕したり、土を動かしてしまうと、土中の種の一部が表層付近に出てきてしまい、発芽する機会を与えます。土を動かした場所と動かさなかった場所で草の生え方が劇的に変わってきます。

不耕起であっても、種まきの時や一部の野菜の収穫の時など土を動かすので、完全に雑草をなくすことはできません。また、タンポポのように風に乗って飛んでくる種もあります。しかし、自然農では草が生えないと、亡骸の層を形成できず生命の循環ができなくなります。したがって、適度な草は生えた方が良いです。

結論3: 耕さないと雑草を軽減する

その他のメリット

以上により耕さないことにより、耕す目的をすべて果たせることを示しました。それに加え、耕さないと連作障害も軽減できると考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。そのほか、耕さないことのメリットとして、労力の軽減があります。耕すのは重労働だし、機械でやるにしても、エネルギーが必要です。

畝は作物の育つ家

自然農では、一度畝を立てると何年も耕さずにそれを使い続けます。人間も一度家を建てると、何度も作り替えたりしません。畝を作物と周りの生き物たちの家と考え、環境を守っていくことが大切と考えます。

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