自然農、自然農法、自然栽培 何が違うの?

無肥料、無農薬で自然の営みに沿った農法って、いろいろな名前がついています。それぞれの農法で何が違うのか、疑問に思う人も多いと思います。10年間、自然農について研究、実践してきた私が、その違いについて考察しました。

目次

農法は十人十色

はっきり言ってしまえば、農法つまり野菜を育てる方法は、人によって違うということです。「私は自然農をやっています」という人が10人いれば、10通りのやり方があると思います。地域の気候、土の状態、経済状態、どれくらい時間をかけられるか、何年自然農を続けているかなど、様々な条件によりやり方が変わってくるからです。

また、多くの人は毎年試行錯誤により年々進化していくため、同じ人でも去年と今年で農法が変わるかもしれません。

各農法を分析

十人十色の農法ですが、それでも偉大なる先人たちが、自然農、自然農法、自然栽培などという名前で体系化、普及してきました。それぞれの特徴についてまとめました。

自然農法

福岡正信氏

人為を徹底的に排除した「一切無用」の農法。米と麦の輪作の農法は、400ページ以上の著書「無[Ⅲ]自然農法」の冒頭わずか1ページ足らずですべて書ききれるほどシンプルです。収穫した時に出る藁を播いて、その上から土団子に詰めた種を播くだけ。これで、反当り10俵とれるそうです。

「鶏糞でもあればふりまいておく」とあることから、肥料を完全に否定しているわけではないようです。

やり方としてはとてもシンプルで簡単に見えますが、細かな手順などが示されていないからか、再現しようとしても、期待するほどの収量が得られないことが多く、なかなか定着しなかったと言われています。福岡氏の境地にまで到達しないと為しえないのかもしれません。しかし、著書「わら一本の革命」により、自然農法という言葉と概念を世に広めた功績は大きいと思います。

岡田茂吉氏

世界救世教の教祖。自然堆肥以外の些かの不純物も混ぜることなく、土を清浄化し、土自体の力を発揮させる農法。現在では秀明自然農法として継承されています。

余剰な肥料分を「肥毒」と呼び、徹底的に土を清浄にすることを特徴とします。また、自家採種、連作を推奨し、土がその作物に慣れていくという考えをするようです。

自然農

川口由一氏

福島正信氏の自然農法が、誰にでも再現できるような方法ではなかったのですが、川口由一氏が誰もが実践できるように、ある程度体系化したのが自然農だと考えます。しかし、完全にマニュアル化できるわけではなく、作物の状態、草や虫の状態から、人がどのように手を貸すか、判断が求められます。

基本的に無肥料ですが、栄養が不足する場合には、「補い」といって、その畑や生活圏内で出た米ぬかや油粕などを施すことは認められています(ただし、「肥料」とは言いません)。刈った草をその場の畝に敷くことで、「亡骸の層」を発達させ生命を循環させます。

私は、川口氏の自然農をベースにしていますが、ほかの方の手法も自分に合う部分は取り入れるようにしています。

沖津一陽氏

川口氏の著書「妙なる畑に立ちて」を手にしたことから、自然農に取り組みはじめ、28年間、自然農の専業農家として営みを続けてこられました。著書「自然農を生きる」では、長年経営として自然農を営んでこられた視点で、栽培技術から現代の課題に対する鋭い洞察、人生観まで述べられています。

自然農に携わる人、興味のある人には必読の書と言えます。

自然栽培

木村秋則氏

「奇跡のリンゴ」で一躍有名になりましたが、決して奇跡ではなく、再現性のある方法として、講演や出版等により、自然栽培の普及に努められています。自然栽培という名前には、自然任せではなく積極的に作物に働きかけをする「栽培技術」であることの現れとのことです。

したがって、耕起の方法、植え付けの方法など、具体的な方法論なども述べられています。しかし、耕起や施肥の方法など、「土を観察して対応しましょう」とされており、自由度が高い分、かえって自然農より難しくなっているのではないかと、私は感じています。

また、木村氏は「自然栽培」という季刊書籍の監修もされており、自然栽培に関する様々な記事を読むことができます。しかし、今は休刊となっており、復活が待たれます。バックナンバーは号によっては、まだ購入可能です。

徳野雅仁氏

私がはじめて無肥料無農薬でも野菜が育てられるということを知ったのが徳野氏の書籍でした。当時はまさに目からうろこで、絶対にこの農法を自分でもできるようになりたいと強く思い、現在に至っています。

方法論としては、無肥料無農薬の標準的な手法です。雑草や虫との付き合い方や、種まき、定植など家庭菜園向けの説明だったので、入りやすかったです。

自然菜園

竹内孝功氏

竹内氏は自然菜園という言葉を使用されています。生えている雑草の種類により土ステージとして分類し、土ステージの低いうちは、堆肥などを施すことも許容しています。したがって、開始当初からもある程度収穫が期待できるので、初心者にも取り組みやすいと思います。

また、以前の記事でも紹介しましたが、3年5作の輪作が非常に気に入っていて、効率的に畝を回すことができます。

竹内氏はYoutubeでも活躍中で、書籍だけではイメージしにくかった作業なども、動画で分かりやすく解説されています。

まとめ

無肥料無農薬の農法について、特徴をまとめました。多少の違いはあるものの、いずれも自然の力を活かし、人為を極力少なくすることで、健康でおいしい野菜を育てるという点は共通していると思います。実践する人のおかれた環境により、取り入れやすい方法を採用し、実際に試行錯誤しながら、自分なりのやり方を築いていくことが重要だと思います。

関連書籍

各農法の特徴を説明しましたが、それぞれの世界をもっと詳しく知ることができる書籍を紹介します。いずれも現在の私の自然農に関する知識体系を構築し、私の農法をに取り入れてきたものです。

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