土壌微生物の測定方法 ー自然栽培の畑の驚くべき結果ー

作物の栽培には土壌微生物が重要だと言われていますが、微生物は目で見ることはできません。畑の土にどのような微生物がいるのか見えるようになれば、客観的に肥沃度を測ることができます。実はそのような方法が開発されていました。その方法で自然栽培の畑の微生物を測定した結果、驚くべき結果が得られたので紹介します。

目次

土壌微生物の測定方法

2015年のミラノ万博で出展されたのが、横山和成博士の「土壌微生物の見える化」技術です。これまでの土壌分析と言えば、物理性や化学性が重視されていましたが、この技術により微生物の多様性が、文字どおり見えるようになります。測定方法の概要は以下のとおりです。

  1. 土壌サンプルを採取
  2. 採取した土を水に漬け、懸濁液を調製
  3. 微生物のエサとなる95種類の有機物が入ったプレートに懸濁液を入れる
  4. 2日間培養した後、土壌微生物群集を装置にて解析

以上により、95種類の有機物のそれぞれをエサとする微生物が存在すれば、活動状況により紫色に発色します。したがって、95種類中、発色する数が多いほど微生物多様性が豊かであることになります。

自然栽培の畑の土の測定結果

上記の方法を自然栽培を実践する2人の農家さんの畑の土に適用しました。2人とも無肥料自然栽培をそれぞれ7年、13年続けておられます。採取した土壌サンプルは、根圏と非根圏の2種類です。根圏とは根の周りの土壌のことを言います。

測定した結果、非根圏については両者の畑で微生物活性に大きな差があったのですが、根圏についてはほとんど同じ結果となりました。しかも驚くべきことに、95種類の発色状態のパターンが見事に一致していたのです。しかも、採取した場所で育てていた作物が水菜とジャガイモと全く異なっていたにも関わらずです。この現象は、偶然の一致で起こる確率は極めて低いです。植物の根と微生物の共生関係により、生息する微生物の種類が一致したものと考えられます。これが無肥料栽培でも野菜が育つ根拠になっていると思います。

自然農では人為は不要

多くの有機農法では、投入する有機物資材や場合によっては微生物資材なども含め、「土づくり」を人間が行っています。これにより微生物は活性化すると思いますが、それが作物の生育した環境になるためには、多くの試行錯誤と熟練が必要になります。

そこが面白味であるのかもしれませんが、肥料を施さない自然農では、自然に必要となる草が生え、それを土に返していくことで、自然に作物の生育に適した豊かな土壌になっていくと考えられます。異なる2つの畑で驚くほど同じ微生物相であったことがそれを示していると思います。

科学的な分析というのは、無限にある自然のパラメータのごく一部を切り取った断面に過ぎないと思いますが、その断面からでも自然の偉大さに気付けることがあると思います。それこそが科学の存在意義だと思いますが、科学によりすべてがわかる、あるいは科学的に証明されないものは信じないといった、科学妄信には注意する必要があると考えます。

今回の記事は「自然栽培」という雑誌の1記事から紹介させていただきました。博士と2人の自然栽培農家さんの対談は非常に興味深いです。まだバックナンバーが販売されていますので、ご興味がありましたら、ご参照ください。(在庫限りとなります)

注記:本記事内では、自然栽培と自然農という言葉を使い分けています。どの言葉を使用するかは実践されている人の選択を尊重しています。

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