自然農の土づくり ー何もしなくても団粒構造ができるわけー

野菜を育てるには、土づくりが重要ということがよく言われます。そして、土づくりは団粒構造を目指すのが良いとされています。有機農法では難しいとされる土づくりですが、自然農では特に何もしなくても団粒構造ができていきます。

この記事を読めば、団粒構造とは何か、団粒構造の効果について理解できるとともに、自然農が土壌の団粒化に適した手法であることが理解できます。

目次

団粒構造とは何か

団粒構造のでき方

土壌は様々な大きさの粒子により成り立っています。その中で250ミクロン(0.25mm)以下の粒子をミクロ団粒と言います。これは、粘土粒子、細菌細胞、腐植などが、細菌が分泌する粘物質により結合して形成されます。

粘物質とは多糖類、タンパク質、ペプチドなどがあり、金属イオンと強固に結合することで、微生物に分解されず長期的な結合物質として機能します。

250ミクロン以上の粒子をマクロ団粒と言います。マクロ団粒は、ミクロ団粒が糸状菌や植物の根などによって結合して形成されます。糸状菌とは、土の中に普通に生息する菌類で、植物の遺体を分解する作用を持ちます。この時、糸状菌の菌糸から粘物質が分泌され、ミクロ団粒を結合します。

また、植物の根も、茎葉での光合成によりできた糖類を分泌することで、ミクロ団粒を結合する作用を持ちます。植物の根の周り(根圏といいます)には様々な微生物が生息、共生しているため、団粒構造が発達しやすくなります。

団粒構造の効果

団粒構造が発達すると、マクロ団粒の間に空気の層が生まれます。この空気層は比較的大きく、雨が降っても水が通り抜けやすいため、水はけのよい土になります。したがって、根や微生物の活動に必要な酸素が供給されるため、これらの活動が活発になり、さらに団粒の形成が促進されます。

一方、ミクロ団粒の間に入った水は、表面張力により簡単に排出されません。植物の根は、この部分の水を吸収することができるため、長期間雨が降らなくても枯れてしまうことは、ほとんどありません。

したがって、団粒構造の発達した土は、水はけと水持ちという相反する機能を両立することができます。

また、団粒構造の隙間は様々な大きさがあり、その大きさに応じた微生物が生息できるため、土壌微生物の多様化にも貢献します。これにより、特定の微生物の増殖を抑制し、病気の発生も低減できると考えられます

自然農では何もしなくても団粒構造になる

非常にメリットの多い団粒構造ですが、自然農の土で団粒構造をするにはどうすれば良いでしょうか?実は、自然農を行っているだけで、団粒構造が発達します。

団粒構造は根の周りで形成される

先に述べたように、根の周りでは根から分泌される有機物と、それを利用する微生物の活動により、土の団粒化が進みます。実際、びっしりと根が張り巡らされたような多年生の草地では、団粒構造が非常に発達していることが知られています。

自然農では草を刈ってその場に敷きますが、根を抜くことはしません。これにより土中の根の量が多く、その周りの微生物も増えることで、団粒が発達しやすい環境になります。

耕すと団粒構造は減少

自然農では不耕起が基本であるため、土中の微生物の環境が保持されます。しかし、耕うんすると、多量の酸素が土中に供給され、有機物が急速に分解されます。また、植物の根の作用もなくなってしまうため、マクロ団粒が維持できず、団粒構造が崩壊していきます。

有機肥料を入れない慣行農法では有機質がどんどん失われるため、ますます耕うん、施肥をしないと作物は育たなくなります。

また、有機農業では有機肥料を投入することで、土壌団粒を維持、増加することができます。しかし、人為的に資材を投入することで土中の栄養や微生物のバランスをとることは難しいため、有機農業では土づくりが重要と言われるのだと思います。

自然農のやり方そのものが団粒化を促す

自然農では以下の特徴により、自ずから団粒化が促進されることになります。

  • 草を刈ってその場に敷くことで、糸状菌などの微生物が分解し、粒子を結合する。
  • 根を抜かないことで、根圏での微生物活動が活発になる。
  • 耕さないことで、物理、化学、微生物の環境を維持する。

そもそも、自然農では土づくりという概念がありません。人間が土を作ることはできないからです。自然に寄り添った方法で作物を育てることで、それが結果的に団粒構造になっていたということです。

まとめ

土壌の団粒構造についてまとめました。

  • 団粒構造とは、様々粒子が微生物や根の活動により結合したもの
  • 団粒構造により水はけと水持ちを両立できる
  • 団粒構造は様々な微生物の住みかとなり、病気を抑制する
  • 自然農は土壌団粒化の過程そのもの

土壌団粒についてさらに詳しく知りたい方は、下の書籍を参照ください。基本的なことから、専門的な内容までまとめられています。

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