本格的な農業ではなく、小さな畑で自給的な栽培をやってみたい。個人で畑をどうやって借りればいいの?
というお悩みを解決します。
私も最初に畑を借りようとした時、何をすればいいかよくわからずに迷っていたんです。
そんな私もいろいろと調べていくうちに、簡単に畑を借りられることが分かったんです。今では、4か所の畑で自然農の野菜作りを楽しめるようになりました。
畑を借りるには、大きく分けて、農業委員会に届け出る方法と、貸し農園を借りる方法があります。
この記事では、畑を借りる時の手続きや必要な書類などを詳しく説明します。また、畑を探すときのコツや、畑を借りた後の注意点などもお伝えしていきますね。
畑で野菜作りを始めると、自分で育てた野菜の味は格別です。あなたも自給自足の生活を体験してみませんか?
畑を借りる方法
そもそも、畑ってどうやって借りればいいの?
畑(農地)を借りるには、関係する法令に従って手続きする必要があります
畑(農地)を勝手に個人間で貸し借りすると、法令違反になる可能性があるので、注意が必要です
畑の借り方は以下の3種類があります。
農業委員会へ届け出 | 収穫物の販売 | 面積 | 賃料 | |
---|---|---|---|---|
農地法3条 | 必要 | 可 | 広い | 安い |
利用権設定方式 | 必要(簡易) | 可 | 広い | 安い |
農園利用方式 | 不要 | 不可 | 狭い | 高い |
それでは、各方式を詳しく見ていきましょう。
なお、数百m2の畑を借りて自給的農業をするのではなく、数~数十m2の貸し農園で野菜作りを楽しみたい方は農園利用方式までお進みください。
農地法3条
畑を借りる場合、基本的には農地法3条の適用を受けます。
農地法は、農地を所有者自身が耕作することを原則とし、農地のむやみな分散、転用を避けるため、昭和27年に制定されました。
農地法3条には、農地の権利、移転の設定には農業委員会の許可が必要とされています。農業委員会の許可を得るには、次の要件を満たす必要があります。
- 権利を取得しようとする者が所有する農地等に、請負耕作させたり、耕作放棄している農地等がないこと
- 農業経営に必要な農作業に常時従事すること (年間150日以上)
- 権利取得後効率的な農業経営ができること (資産目的、投資の対象としての取得は不可)
難しい言葉で書かれていますが、要するに、借りた畑できちんと作物を育ててくださいね、ということです。
なお、以前は「作付面積が50アール以上(北海道では2ヘクタール以上)」という要件もありましたが、これは2023年の4月の法改正で撤廃されています。
今では、小さい面積の畑でも借りられるようになりました。自給的な農業をするには、大変ありがたい改正です。
農業委員会への届け出はどうすればいいの?
申請書と必要書類を提出しましょう
申請書の様式は、お住まいの市区町村の農業委員会のホームページからダウンロードできます。必要事項を記入し、農業委員会に提出しましょう。
「農地法第3条許可申請書記入マニュアル」で検索すれば、記載方法と記入例を見ることができます。リンクは磐田市の例です。お住まいの地域のマニュアルをご参照ください。
新たに畑を借りる場合には、「貸借権」を「設定」する申請となります。
申請書の提出の際には、当該の農地の登記簿謄本と公図を添付する必要があるので、法務局にて取得しておきます。
また、地主さんと貸借契約を結んで、契約書の写しも添付する必要があります。ここで、使用期間、賃料やその他の条件などを定めます。
賃料は地主さんとの交渉となりますが、後で説明する農園利用方式よりも安いことが多いです。きちんと雑草などの管理をするという条件で、無償で貸してくれる場合もあります。
貸借契約書の書き方は「農地貸借契約書 ひな形」と検索してください。有償の場合は「賃貸借契約書」、無償の場合は「使用貸借契約書」となります。
書類提出後、農業委員会にて審査されます。自宅から畑まで通える距離か、道具、機械は揃っているか(面積が狭ければ機械はなくてもOK)などにより、きちんと畑で栽培できるかを判断されます。
無事許可が下りれば、畑を借りて栽培開始となります。収穫した野菜は販売できます。
利用権設定方式
上記の農地法3条の許可を必要としない借り方があります。それが農業経営基盤強化促進法に基づく利用権設定方式というものです。
どの農地でも適用できるわけでなく、農業振興地域内の農用地という制約が付きます。農業振興地域は市町村により定められており、市街化区域のような場所は該当しないことが多いです。
通常は市街化調整区域内の農地ということになります。該当地域で農地を見つけることができれば、農業委員会に申請することで、借りることができます。
申請様式は利用権設定方式のものを使用します。記載内容は農地法3条の申請書よりも簡便となっています(申請様式例)。お住まいの市区町村の様式を使用してください。
この方式は、面積の下限値の規定がないため、2023年3月以前は小さい面積の畑を借りるのに有効な手段でした。
しかし、前に説明したように、現在では農地法3条でも面積の下限値が撤廃され、小さい面積でも借りられるようになりました。なので、今となってはこの方式を使う意義は少ないです。なお、この方式では収穫した野菜の販売が可能です。
農園利用方式
週末に家庭菜園程度の規模で栽培を楽しみたいという方は、農園利用方式がおすすめです。これは特に法律の制約を受けません。農園を開設した農家さんと直接契約を結ぶだけです。農園によっては利用者組織に入る必要がある場合もあります。
また、市町村や農協が運営する農園もあるので、そちらを利用することも可能です。利用規約に草の管理などが入っている場合が多いので、自然農を実践する場合には、事前に了解をとっておいた方が良いです。
なお、農園利用方式の場合には、原則として収穫物を販売することはできません。
地方では、年間数千円~1万円程度で借りることができます。
都会に住む人は、なかなか家の近くで畑を見つけることは難しいです。
なのでここで、シェア畑というサービスを紹介します。首都圏、関西圏、福岡などの都市部で農園を多数展開しています。
料金は月に数千円~1万円程度とやや高額ですが、農具や資材を借りることができ、菜園アドバイザーによるサポートまでついています。体一つで畑に行って農作業を体験できます。
シェア畑について詳細を知りたい方は、こちらをご参照ください。
では、次に実際に畑を探す方法について解説します。
畑を探す方法
畑を探すのに決まった方法はありません。畑といっても土地なので、出会いやご縁が必要になります。
そして、土地の貸し借りになるので、信用が重要です。
いきなり地主さんを訪ねても、見ず知らずのあなたに簡単に貸してくれるものではありません。
畑を見つける方法として、次の2とおりが考えられます。
- 知り合いの農家さんに聞いてみる
- できるだけ多くの人に、畑を借りたいことを伝える
ではそれぞれ見ていきましょう。
知り合いの農家に聞いてみる
知り合いの農家がいる場合には、借りられそうな畑がないか聞いてみましょう。
農家は地域のネットワークで様々な情報を持っていることが多いです。
「あそこの畑は○○さんに貸してたけど、高齢でやめちゃったよ」といった情報が出てくることがあります。
その場合、知り合いの方から紹介してもらうようにしましょう。知っている人からの紹介だと、ある程度信用してもらいやすくなります。
知り合いに農家がいない場合は周囲に畑を借りたいことを伝える
知り合いに農家なんていないよ、という場合。できるだけ多くの人に、畑を借りたいことを伝えてみましょう。
「野菜作りを始めたいんだけど、畑を借りれそうな人いない?」という感じです。
親から畑を相続したけど、本人は農業をやっていないといったケースがよくあります。
このような場合、夏場の草の管理だけをやっていて、大変な労力がかかるため、誰か使ってくれないかと考えていたりします。
そういう人を紹介してくれるかもしれません。
地方に行くほど、このような話はたくさん聞かれます。なので、できるだけ多くの人に聞いてみると、意外とすぐに見つかると思いますよ。
私もはじめはこの方法で見つけました
借りられそうな畑が見つかったら、先ほど説明した方法で手続きをしてくださいね。
畑を借りた後の注意点
畑を借りることができた後、地主さんや周辺の住人の方から信頼を得るため、次のことに注意してください。
草の管理をしっかりとやる
草の管理をしっかりとやりましょう。地主さんは、これをしてもらうために畑を貸していると言ってもいいほどです。
敷地の境界部分は特に念入りにやって、周囲の方に迷惑が掛からないようにしましょう。
自然農で野菜を育てる場合、草が重要な役割を果たしますが、むやみに草を伸ばさず、こまめに刈って畝に敷くことが重要です。
こうすることで、草が生えていても、きちんと管理されているという印象を与えることができます。
自然農での草の役割については、下の記事をご参照ください。
ゴミを持ち帰る
種の袋や包装資材など、ゴミになるものは持ち帰って処分しましょう。
また、自分のものではなくとも、前に畑を借りていた人が残したものや、風で飛んできたものなどがある場合にも、きちんと片付けることが重要です。
周りの目だけでなく、自分も気持ちよく畑を使うことができます。
車を停める場所を確認する
車で畑に通う場合には、あらかじめ地主さんに車を停める場所を確認しておきましょう。
畑の中に駐車スペースがあればよいですが、路上駐車をすると近隣の住民の方に迷惑が掛かります。
ルールに従って車を停めることが大事です。
丹念に栽培する
大切な畑を借りるわけですから、丹念に野菜を栽培することが重要です。
畑で作業をしている姿は、意外と周囲の方から見られています。散歩中の人から、「いつも頑張ってますね」などと声をかけていただくこともあります。
このようにして、周辺の信頼が得られると、別の畑を紹介されたりします。始めは難しく感じた畑の確保ですが、ここまでくると、簡単に借りられるようになります。
まとめ
個人が小さい面積でもできる畑の借り方を紹介しました。
自分の畑で好きな野菜を育て、それをいただく。心身の健康にこれほどいいことはありません。
ぜひ、この記事を参考に、畑を借りて野菜作りに挑戦してみてください。