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自然農には「草を敵にしない」という独自の考え方があります。草をすべて排除するのではなく、草と共生しながら作物を育てていく──これこそが、自然農の大きな魅力です。
しかし現実には、
という声が非常に多く聞かれます。
では、自然農で草とうまく付き合うには、何をどう変えれば良いのでしょうか?
結論から言うと、夏の爆発的な雑草の伸びは「事前の準備」と「草との付き合い方」を少し変えるだけで、驚くほど対処しやすくなります。
この記事では、
自然農初心者が最も悩みやすい「雑草対策」について、
考え方から具体的な管理方法までを体系的にまとめます。
緑に包まれた、気持ちよく続けられる畑づくりの第一歩として、ぜひ最後まで読んでみてください。

自然農では、むやみに雑草を抜きません。
それは、草が土を覆い、微生物の環境を守り、
畑全体のバランスを整える役割を担っているからです。
自然農で雑草を抜かない理由は、
単に「手間を省くため」ではありません。
草を抜くことで土がむき出しになると、
といった逆効果が起こりやすくなります。
雑草が多い畑は「失敗」ではありません。
それは、土が回復しようとしているサインでもあります。
ただし、
作物が草に負けてしまう状態は、
自然農として望ましい姿とは言えません。
そこで必要になるのが、
草を敵にせず、作物を守るための「雑草対策」です。

自然農の雑草対策がうまくいかなくなる原因は、
草刈りの方法や道具選びよりも、栽培面積の設定にあることが少なくありません。
初心者ほど、
「少し広げても何とかなるだろう」
と考えがちですが、雑草対策は面積に比例して大変になる作業ではありません。
面積が増えるにつれて、
草整理に必要な時間や判断は急激に増え、
特に夏場は、数日手を入れられないだけで一気に破綻しやすくなります。
自然農では、
無理なく手を入れ続けられる面積かどうかが、
草対策の成否を左右する最も重要な要素になります。
管理する面積が広くなると、
といった状況が起こりやすくなります。
特に夏は、
草の生長スピードが人の対応を上回るため、
一度リズムを崩すと、草に追われる状態になりがちです。
これは技術や経験の問題ではなく、
面積そのものが引き起こす問題です。
自分の草整理の許容量を超えて面積を広げると、
仮に栽培面積を2倍にしても、収量は2倍にならないことが多くなります。
私自身の経験でも、
管理が行き届かなくなった年は、
結果として、単位面積あたりの収量が落ちました。
面積を増やすことで、
収量だけでなく作業の満足度まで下がってしまうのは、
とてももったいないことと考えます。
草に追われない自然農を続けるためには、
「広さ」よりも
確実に管理し切れる面積かどうかを基準に考えることが大切です。

自然農の雑草対策を難しくしている原因は、
草の量そのものではなく、毎回「どうするか」を考え続けることにあります。
畑に立つたびに、
と判断を繰り返していると、
作業量以上に精神的な負担が大きくなります。
そこで重要になるのが、
あらかじめ判断基準と設計を決めておくことです。
ここでいう「判断」と「設計」は、
草とどう向き合うかという思想ではなく、
作業を破綻させないための現実的なルールです。
この考え方を土台にすることで、
後述する具体的な草刈りや管理作業が、
迷いなく、最小限の労力で行えるようになります。
雑草対策で最も疲れてしまうのは、
畑に生える草をすべて管理しようとすることです。
自然農では、
草が生えていること自体が問題なのではありません。
重要なのは、作物が育つ条件が保たれているかどうかです。
草があっても作物が健全に育っていれば、
その草は「管理しなくてもよい存在」になります。
この判断基準を持つことで、
ようになります。
「どこまでやるか」を毎回悩むのではなく、
やらないことを先に決めることが、
雑草対策をラクにする第一歩です。
すべてを管理しないと決めたら、
次に必要なのは、管理する場所を明確にすることです。
雑草対策は、畑全体を均一に行う必要はありません。
作物の生育に直接影響する場所と、
そうでない場所を分けて考えます。
たとえば、
このように空間ごとに役割を決めることで、
草整理の作業量は大きく減ります。
後に解説する
作付け前・発芽直後・生育期の草対策は、
すべてこの「場所による役割分担」を前提にしています。
最初に設計を決めておくことで、
その後の作業は、
考えなくても体が動く状態に近づいていきます。
畑に生える草は、毎年同じ姿で現れるわけではありません。
今どんな草が多いかは、土がどの段階にあるかを映しています。
草が激しく増える年は、管理が失敗しているとは限りません。
自然の循環に沿って土が整う途中で、一時的に草が前に出ることがあります。
草マルチが積み重なり、土の構造が安定してくると、
草対策の負荷は確実に軽くなります。
背が低く柔らかい草へと変わり、整理に要する時間も減っていきます。
短期の草整理の判断と、長期の土と草の変化は、
意識して分けて考えることが大切です。
今の草だけを見て慌てず、畑全体の流れの中で、
今どこにいるのかを捉えましょう。

雑草対策というと、草刈りや草取りなど、
「草が生えてからの作業」に意識が向きがちです。
しかし実際には、その後の草整理の負担は、
植え付けの段階ですでに大きく決まっています。
ポイントは、苗や種を
直線的・等間隔に植えることです。
これだけで、後の雑草管理は驚くほどラクになります。
草が伸びてきたとき、畑の中で
「どこに作物があるのか」がすぐに分かる状態であれば、
草整理は迷わず手を動かせる作業になります。
たとえ草に埋もれかけても、苗の位置を予測できるため、
草の中から作物を探し回る必要がありません。
その結果、作物を誤って刈ってしまう不安が減り、
作業のスピードと精度が大きく向上します。
一方で、無秩序に植え付けを行ってしまうと、
草が伸びた段階で状況は一変します。
「この辺りに植えたはず」という曖昧な記憶を頼りに、
草の中から苗を探し、傷つけないよう神経を使って
草を刈る必要が出てきます。
これは体力的な負担以上に、精神的な消耗が大きく、
草整理が苦痛になりやすい原因の一つです。
自然農では、草を完全に排除することはしません。
だからこそ、草の中で作物をどう見失わないか
という視点が重要になります。
植え付けを整理しておくことは、草と対立しないための準備であり、
この後に続く草刈りや発芽直後・生育期の管理を
成立させるための大切な土台です。
この前提が整ってはじめて、草整理は
「追われる作業」から
「状況を見て調整する作業」へと変わっていきます。

夏の草の勢いに振り回されないためには、まず「草が伸びる前に畑の状態を整えておくこと」が欠かせません。
とはいえ、どれだけ準備を整えても、雑草は必ず生えてきます。
大切なのは、草を敵とせず、負担の少ないやり方で“育つ前に最小の手間で扱う”こと。
そこで次に、自然農で最も重要となる 「草刈りの方法」 を、作付け前・発芽直後・生育期の3つのステージに分けて解説します。
作付け前の草管理は、自然農における草対策の中で 最も重要な工程 です。
ここで適切に手を入れておくかどうかで、その後の草の伸び方も、草刈りの負担も、さらには作物の生育そのものも大きく変わります。
作付け前の草管理は次のとおりです。
特に、セイタカアワダチソウ・ヤブガラシ・スギナなどの宿根草は、
後からの対処が難しいため、この段階での対応が不可欠です。
また、寿命の終盤に差しかかった草であれば、
刈らずに押し倒す方法も有効です。
倒された草はそのまま枯れ、
長期間機能する草マルチになります。
発芽直後の作物は、雑草に最も負けやすい時期です。
一方で、この時期の草はまだ小さく、
摘み取るだけで簡単に整理できます。
草が小さいうちに対処すれば、
といったメリットがあります。
生育期の雑草対策では、
作物との距離によって管理方法を変えることが重要です。
このゾーニングを意識することで、
草刈りの頻度と負担を大きく減らすことができます。
※本章では考え方を中心に整理しました。
実際の作業例や写真付き解説は、別途詳しくまとめます。

自然農の草整理では、
「どの道具を使うか」以上に、
「どの状態で、どう使うか」が重要になります。
同じ草でも、再生を遅らせたいのか、
マルチ資材として活かしたいのかで、
道具の使い方は大きく変わります。
ここでは、自然農でよく使われる代表的な道具について、
役割と使い分けのポイントを整理します。
| 道具名 | 主な使いどころ | 得意な作業 | 使い方のポイント |
|---|---|---|---|
| のこぎり鎌 | 株周り・畝上 | 草整理全般 草丈の調整、草マルチ作り | 根を抜かないよう地上部のみまたは根の浅い部分を刈る 刈る位置により、草が再生する速さを変える |
| ねじり鎌 | 株周り・畝上 | 土ごと草を削る、土寄せ | 引き抜かず、表土を薄く削る意識で使う |
| 三角ホー | 畝上・畝間 | 広めの範囲の草整理 | 立ったまま使えるため、体への負担が少ない |
| 刈り払い機 | 畝間・圃場外周 | 広範囲の草刈り | 株周りの細かい作業には使わない |
では、それぞれの道具の使い方について、詳しく見ていきましょう。
のこぎり鎌は、自然農の草整理でもっとも出番の多い道具です。
作業効率を考えなければ、すべての草整理の作業をのこぎり鎌だけでできるとも言えます。
草の再生をできるだけ遅らせたい場合は、
刃を土に差し込み、根に近い位置を切るように使います。
これは、生長点の下から刈り取ることで、
草の再生スピードを抑えるためです。
一方で、刈った草をマルチ資材として使い、
早く再生してほしい場合には、あえて高刈りにします。
刈り高さを変えるだけで、
草の振る舞いをコントロールできる点が、
のこぎり鎌の大きな特徴です。
平らな刃の鎌ではなく、のこぎり状の刃を使う理由は、
引くだけで繊維質の草を切りやすく、
力を入れずに安定した作業ができるためです。
ねじり鎌は、草を土ごと削りたい場面で使います。
草の根が浅い状態であれば、表土を薄く削るだけで、
まとめて草を処理できます。
また、削った土を株元に寄せれば、
軽い土寄せ作業にも使えます。
細かい調整がしやすいため、
株周りや狭い範囲での作業に向いた道具です。
三角ホーは、立ったまま使えるのが大きな特徴です。
腰を曲げずに作業できるため、比較的広い範囲を、
一定のリズムで刈ることができます。
ねじり鎌と同様に、土ごと草を削る使い方ができ、
草の再生を抑えたい場面でも有効です。
また、筋まきの際に溝を付ける道具としても使えるため、
一本あると作業の幅が広がります。
刈払機は、
広範囲を一気に刈りたい場合に使います。
畝間や畑の周囲、
境界部分など、
手作業では時間がかかる場所では、
非常に効率的です。
一方で、
株周りの草整理や、
作物のすぐ近くの作業には向いていません。
細かい調整が難しく、
作物を傷つけるリスクが高いため、
場所を選んで使う道具と考えるとよいでしょう。
なお、自然農で使用する道具についてはこちらの記事にまとめています。


ここまで、草整理をラクにするための
管理や判断、道具の使い方を見てきました。
しかし現場では、同じ方法を実践しても
うまくいく人と、そうでない人が分かれます。
その差を生む大きな要因が、
草に対する捉え方=マインドです。
自然農の雑草対策は、
技術だけで完結するものではありません。
草をどう見て、どう向き合うかが、
日々の行動そのものに表れてきます。
自然農では、草を邪魔者として扱いません。
かといって、単なる「資源」として利用する対象でもありません。
草は、作物や人、微生物や虫と同じく、
畑の中で共に生きる連続したいのちの一部です。
草が生えることで土は覆われ、水分や温度が保たれ、
多様な生き物が支えられています。
草を完全に排除しようとすると、
その連続性が断たれ、結果として畑のバランスも崩れます。
自然農の草整理とは、草を消すことではなく、
作物が育つ余地を整える行為です。
草と作物の関係を調整する、その視点を持つことで、
草整理は対立から共存へと変わっていきます。
草や土に感謝すると、作物が良く育ち、草にも悩まされなくなる。
そんな言葉を聞いたことがあるかもしれません。
でも、「草に感謝すると、ほんとうに草は減るのか」
そう疑問に思う方も多いでしょう。
感謝したからといって、草が生えなくなることはありません。
そこに魔法のような効果はありません。
しかし、感謝の気持ちを持つことで、人の行動は確実に変わります。
草を敵と見なしていると、少し伸びただけで焦りが生まれ、
必要以上に刈ってしまいがちです。
一方、草を同じいのちとして見ると、
今どこを整理すべきか、どこを残すべきかを
落ち着いて判断できるようになります。
その一つ一つの判断の積み重ねが、
草と無理なく付き合える畑を
現実のものにしていきます。
感謝とは精神論ではなく、
判断と作業の質を整える姿勢
そう捉えるとよいでしょう。
自然農の雑草対策は、草を抑える技術の集積ではありません。
結果を左右するのは、どの順序で畑を整えるかです。
最優先で見直すのは栽培面積。
管理できない広さは、草整理を必ず破綻させます。
次に、すべてを管理しようとしない判断。
管理する場所と任せる場所を空間として分ける設計が、
作業の負担を大きく下げます。
その上で、
植え付け方法と草整理の手順、
道具の使い分けが活きてきます。
草に追われるか、草と共に育てるかは、
技術よりも設計で決まります。
草が増えたときこそ、
やり方ではなく全体を見直す。
それが、自然農を長く続けるための
もっとも確かな近道です。