家庭菜園で自然農を始めたいけど、どんな道具を揃えていいか分からない
この記事では、そんな疑問にお答えします。
自然農では大型の機械などを用いないので、必要最小限の道具があれば始めることができます。具体的にどんなものが必要なのか、費用はどのくらいかかるのか知りたいですよね。
自然農歴10年以上の私が、これさえあれば大丈夫という必須の道具を紹介します。
なんと、自然農に必要な道具はたったの3つです。
本当にこの3種類だけで全部できるのかしら?
3種類だけでできなくはないけど
あったら便利なものもあります
この記事を読むことで、もう道具選びに迷うことはありません。あなたも、思い切って自然農を始めてみませんか?
それでも、道具を揃えるのが面倒だなという人は、手ぶらで畑に通う方法がありますので、こちらもご覧ください。
自然農に必須の3種の道具
自然農では基本的にトラクターなどの大型機械は使用しません。自然農で必要となる道具は、のこぎり鎌、剣先スコップ、平鍬の3種類です。
それぞれの道具の主な用途と一般的な価格帯は次のようになります。
それでは、私が実際に使用しているものを紹介しながら、詳しく解説していきます。
のこぎり鎌
自然農をするときに最も使用頻度が高いのがのこぎり鎌です。その名のとおり、刃にのこぎり状の切り込みが入った鎌です。
のこぎりがあることで、土の上に生えている草だけでなく、土に少し差し込んで根を切ることもできます。
自然農では、草は抜かずに刈ることが重要なので、のこぎり鎌が適しています。
苗を植え付けた周囲など、草を再生させたくない場合には、刃を少し差し込んで成長点の下の根の部分を刈ります。また、畝の肩や通路など、草を再生させたい場合には、成長点を残して地上の草の部分を刈ります。
のこぎり鎌はこのような使い分けが可能です。
写真の上の鎌は、私が5年以上使用したのこぎり鎌です。開墾時に笹などの固い草を切ったため、のこぎりの山がかなりすり減っています。こうなると研いでも切れ味が戻らないため、買い替えが必要です。
また、刃の付け根に金属疲労による亀裂が入っています。のこぎり鎌は消耗品と言えます。
写真の下の鎌は新しく購入したのこぎり鎌です。刃の上部に補強材が付いており、硬い草や根にも対応できます。
軟らかい草用ののこぎり鎌も市販されていますが、切れ味重視のため刃が薄く、すぐにこぼれてしまうので、自然農には固い草用ののこぎり鎌の方が適しています。
平鍬(ひらぐわ)
鍬は主に平鍬(ひらぐわ)と備中鍬(びっちゅうぐわ)があります。平鍬は刃が平たいもので、畝立ての時に通路の土を畝に盛り上げるのに使用します。また、土の塊を砕くのにも使えます。種を播いた後の鎮圧にも使用できます。
備中鍬は刃の先がフォークのように3本とか4本に分かれているもので、主に土を起こしたり、砕いたりするのに使います。自然農は基本的には耕さないので、備中鍬を使うことはありません。
平鍬を選ぶ際には、柄が刃を貫通していないものが良いです。これは、畝を鎮圧するときに柄が飛び出していると、柄の部分でくぼみができてしまうためです。
なお、少しわかりにくいですが、写真の平鍬は柄が貫通しているタイプなので、お勧めではないです。
刃と柄の角度も重要で、土を盛り上げる場合には鋭角になっているものの方が作業しやすいです。逆に土を砕く場合には直角に近い方が良いです。こちらは使用機会が少ないので無くても大丈夫ですよ。
使用時の注意点として、刃先に土や草の根等が付いて、刃先が土に直接触れなくなってしまう場合があります。こうなると作業効率が悪くなるので、刃先についた土等はこまめに取り除くようにしましょう。
剣先スコップ
剣先スコップは、先が三角にとがっているスコップです。なお、先がまっすぐで四角のものは平スコップと言います。
剣先スコップの用途は主に2種類です。一つ目は、畝立ての際に通路(溝)に沿って切り込みを入れるために使用します。畝立てについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
二つ目の用途は、大根、人参、里芋等の根菜類を収穫する際に、土を緩ませるために使用します。
自然農では不耕起のため、雨が少ない場合など土が固くなっていることがあります。そのような状態で根菜を収穫することは難しいです。
そこで、収穫する作物の脇から剣先スコップを差し込み、少し傾けることで土を緩ませます。こうすることで、土を大きく乱すことなく収穫することができます。
不耕起栽培では微生物の活動を妨げないよう、土をできるだけ乱さないことが重要です。
あると便利な道具
では、必須の3種類の道具の他に、あると便利な道具を紹介します。
道具名 | 主な用途 | 一般的な価格帯 | 必要性 | 使用頻度 |
---|---|---|---|---|
ハサミ | 果菜類の収穫 剪定、整枝 | 800円~2,000円 | 必須に近い | 年間を通して使用 |
移植ごて | 苗の定植 | 400円~2,000円 | 苗を移植するなら | 春秋の苗の定植時 |
刈り払い機 | 草刈り | 20,000円~70,000円 | 広い畑なら必須 | 春~秋 |
田引き車 | 定植時の目印 畝立て時の目印 | 5,000円~6,000円 | 綺麗に定植できる | 定植と畝立ての時 |
三角ホー | 草削り 種まき時の溝掘り | 1,500円~7,000円 | 草削りをするなら | 筋蒔きの時 |
レーキ | 畝立て時の均し | 1,500円~5,000円 | 平らな畝を作れる | 畝立て時 |
発芽育苗器 | 育苗時の保温 | サーモ無し: 10,000円~25,000円 サーモ有り: 20,000円~33,000円 | 難易度高め | 夏野菜の育苗時 |
空調服 | 夏場の暑さ対策 | 服+ファン+バッテリー 7,000円~26,000円 | 夏場の作業効率UP | 夏場のみ使用 |
ハサミ
ハサミは果菜類の収穫、剪定、整枝や、誘引用の紐の切断などに使用します。使用頻度が高いので、万能ばさみが1本あるととても便利です。
写真のように、バネが付いていて自然に開くタイプのものが使いやすいです。
太くてかたい茎や枝は切れないので、必要に応じて専用の剪定ばさみを用意しましょう。
移植ごて
移植ごては、苗を植え付けるときに、植穴を掘るのに用います。直播きの作物には不要ですが、苗を植える作物には必要となります。
土が軟らかい畑の場合、のこぎり鎌で少し土をほぐした後、手で植穴を掘ることもできます。その場合、移植ごては必須ではありません。
使用後に土をつけたままにしておくと、写真のように錆びてしまうので、保管時には土を落とすようにしましょう。
刈り払い機
小面積の草刈りであれば鎌で十分ですが、大面積を一気に刈る場合には刈り払い機があると便利です。
刈り払い機には電動式とエンジン式があります。
電動式刈り払い機
電動式は充電式のバッテリー駆動が主流です。エンジン式よりも馬力が弱いため、笹などの硬い草を刈る場合にはスムーズに刈れない場合があります。
以前は18Vが一般的でしたが、最近は36Vが登場したことにより、かなりパワフルに刈ることができるようになりました。バッテリーの容量が限られているため、長時間使用する場合には、予備のバッテリーを用意する必要があります。
草の硬さや刃にかかる負荷を測り、モーターの出力を自動で制御してくれるものがあります。無駄なエネルギー消費を抑え、使用時間を伸ばしてくれる効果があります。
また、柄の部分を2分割できるタイプもあります。軽トラ等ではなく乗用車に積んで運搬する場合には、コンパクトに運べる2分割式がおすすめです。
エンジン式刈り払い機
エンジン式は電動式より馬力があり、給油することにより連続使用が可能です。燃料であるガソリンの取り扱いに注意が必要です。
エンジン式の刈り払い機の燃料はガソリンとエンジンオイルの混合燃料が使用されます。混合率や使用するオイルの種類は製品ごとに決められています。取扱説明書を確認するようにしましょう。
刃の種類
刈り払い機に使用する刃の形は数種類あります。上の写真の刈り払い機はチップソーの刃を取り付けています。円盤の周りに刃(チップ)が付いており、最も汎用的に使用することができます。
ナイロンコードは柔らかい草を刈るのに適しており、壁際なども楽に刈ることができます。
2枚刃、3枚刃のタイプは硬い草を粉砕しながら刈ることができます。ただし、石などに当たった場合のキックバック(跳ね返りの衝撃)が大きいので、いきなり地際を刈らずに、少し高めに刈った後、障害物がないことを確認して地際まで刈っていきます。
刈り払い機を使用するときは、小石や砂粒等が顔に向かって飛んでくることがあります。大きな怪我につながる可能性があるので、保護メガネ、ゴーグル等の保護具を適切に使用するようにしましょう。
田引き車
田引き車はあまり知名度は高くないかもしれません。しかし、自然農においてはあると非常に便利です。
田引き車は、等間隔に印(赤い玉)のついた紐がリールに巻き付けられた道具です。苗の定植や種まきの時の目印として使用します。
目印の間隔は15cm(5寸)、24cm(8寸)、30cm(1尺)など、数種類が市販されています。私は15cm間隔のものを使用しています。作付けの時の株間は15cm、30cm、45cm、60cmなど15cmの倍数であることが多く、幅広い野菜に対応できます。
また、目印がついていないタイプもありますので、購入するときに注意が必要です。
自然農で田引き車をおススメする理由
田引き車を使うことで、まっすぐ等間隔に植え付けることができます。
自然農では畝の上にある程度の草を生やすことが多く、作物が草に埋もれそうになることがあります。
そんな時は草刈りをする必要がありますが、作物の位置が正確に並んでいないと、うっかり作物を刈ってしまいかねません。
田引き車を使うと、簡単に等間隔に作付けすることができるので、草刈り時に作物の位置を特定しやすくなります。少し値段は張りますが、購入する価値は十分にありますよ。
田引車 (田引車5寸間隔目盛付ロープ60m巻済)
三角ホー
三角ホーは長い柄の先端に三角形の刃がついた道具です。
用途は主に2つあります。
- 三角形の側面で草を削り取る
- 三角形の先端で種まきの時の溝をつける
草削りは、長い柄を活かして立ったまま作業できるので、鎌よりも広範囲の草を楽に取り除くことができます。刈り払い機を使うほどではないけれども、広い範囲を効率的に除草したい場合に便利です。
溝をつけるのは、ニンジンなど筋蒔きをするときに使います。
どちらの用途も他の道具で代用できるので、三角ホーは必須アイテムというわけではないですが、使い方次第で作業効率が格段にアップするので、余裕があれば導入すると良いでしょう。
レーキ
レーキは畝立てをした後に、畝の上を平らに均すのに使用します。また、刈った草を集めるのにも使えます。
自然農では、一度畝を立てるとそのまま使い続け、作付けのたびに毎回畝を立てることをしません。したがって、レーキの使用頻度はあまり高くないです。
表面が平らで美しい畝に仕上げたい場合に導入すると良いでしょう。
発芽育苗器
発芽育苗器は、夏野菜の種まきを春の早い時期に行った際に、電気ヒーターで温めて発芽日数を早めるための道具です。発芽を早めることで、夏野菜の収穫時期を早め、長期間収穫を楽しめるようになります。
温度調節用のサーモスタッド(写真の緑色の部品)が付属しているものと、していないものがあります。サーモスタッドがあると、設定温度に達するとヒーターが切れるので、温度を安定させることができます。
発芽までの日数が長くなっても問題ない、十分に暖かくなってから種まきする、という場合には発芽育苗器は不要です。
できるだけ早く夏野菜を収穫したい、発芽までの日数を管理したいという方にはおすすめです。
詳しい使い方はこちらの記事に説明していますので、あわせてご参照ください。
空調服
最後は空調服です。
真夏の炎天下での農作業はかなりきついです。何も対策をせずに長時間作業すると、熱中症にもなりかねません。
空調服は背中のファンから空気を取り込み、袖や首回りまで空気の流れを作ることで、体温の上昇を抑えてくれます。
1万円前後の安価なものから2万円台まで、色々な空調服が販売されています。値段の違いは主にバッテリーの容量によります。日中充電なしで作業する場合には、大容量のバッテリーがおすすめです。
バートルのエアークラフトシリーズは価格は高めですが、7~8時間、連続使用することができます。
私は2年前にバートルの空調服を購入しました。今では夏場の作業には無くてはならないものになっています。
長袖がおすすめ
空調服はベスト(袖なし)、半袖、長袖から選べます。この中では長袖がおすすめです。
農作業時には腕を防護するため、空調服に限らず作業着は長袖を着ることが通常です。夏場の畑では、蚊に刺されることが必至です。
以前、ベストタイプの空調服を着ていた時には、腕が蚊に刺されまくった経験があります。今では長袖一択です。袖の部分にも風が通るので、長袖でも暑さは感じにくいです。
空調服を着ていると、袖口や首周りから風が常に出ているため、手や顔といった肌が露出しているところでも、蚊がとまりにくくなります。
空調服は暑さを防ぐだけでなく、副次的に虫刺されからも守ってくれる効果があります。
インナーはコンプレッションを着よう
空調服の冷却効果を最大限に発揮するには、インナー選びも重要です。コンプレッションと呼ばれる、肌に密着するタイプのインナーがおすすめです。
コンプレッションは吸汗性に優れ、ファンの風により急速に汗を蒸発させることで、効果的に体温を下げてくれます。また、汗のにおいが気になる場合には、消臭効果に優れたものもあります。
まとめ
自然農は、のこぎり鎌、平鍬、剣先スコップの3つがあれば、始めることができます。
その他にも、より効率的に作業するために、あったら便利な道具を厳選してお伝えしました。
始めからすべてを揃える必要はありません。あなたの農作業のスタイルに合わせて選んでいただければと思います。