農薬の功罪 -農薬の本当の危険性-

2021/2/25 公開

農薬を使用した野菜は食べると危険なのでしょうか?私はそうは思いません。では無農薬である自然農の価値はどこにあるのでしょうか?農薬の功罪と自然農の意義について述べます。

目次

農薬を使用した野菜は危険か

日本では農薬取締法により使用できる農薬の種類や量などの使用基準が厳格に定められています。これに準拠することで、残留農薬の基準値を守ることができると言われています。

残量農薬の基準は人の健康に害を及ぼさないように定められているため、農薬を使用した市販の野菜を食べても、健康への影響は無視できる程度だと思います。

農薬を使用することにより、野菜を安定的に供給することができ、私たちは様々な野菜を安く買い求めることができます。

農薬の本当の危険性

基準を守る限りは、食べる人にとってはほとんど無害といえる農薬ですが、では無農薬で育てる意味がないかといえば、そんなことはありません。農薬を散布することで、多くの生き物を殺してしまい、畑の中の生物多様性が損なわれてしまいます。

野菜を食害する虫を殺せば、それを食べる虫や鳥などが来なくなり、かえって害虫にとって住みやすい環境になってしまいます。食物連鎖がきちんと成立することで、生命のバランスがとれ、結果として野菜の食害も減少していくと考えられます。

もっと深刻なのは土壌消毒です。病虫害がひどくなると、土壌消毒されることがありますが、これにより土の中の生き物が壊滅的なダメージを受けます。一時的に病気は収まるかもしれませんが、土壌微生物が極めて少なくなるため、肥料を与えないと作物は育たず、それがさらに病虫害を呼ぶという悪循環に陥っていきます。なお、「土壌消毒」という言葉には非常に違和感があります。毒を消すのではなく、毒を入れていることに他ならないからです。

このように農薬への依存が高まると、周辺の環境や、散布する農家さんの健康への影響も無視できなくなると考えられます。

病虫害の意味

では、そもそも病虫害が発生するのはなぜでしょうか?自然界では、健康に育った植物は病気や虫にやられることはほとんどないです。一方、生育条件が適さないような場所に生えてしまった植物は、病虫害にやられやすくなります。大きく成長する前に枯れて土に返ることで、その場所にもっと適した植物が生育することができます。このようにして健全な生態系が維持されています。

これは畑でも同じことが言えます。どのような農法であっても、健康に育った作物は病虫害にやられにくくなります。また、そのような野菜は非常に味が良いです。一方栄養不足や栄養過多(肥料のやりすぎによる)により健康が損なわれれば、病虫害が多発します。虫や菌はその場所に適していないことを教えてくれているのです。

農薬をかけて虫や菌を殺して、その作物を食べるということは、本来土に返るべきものを食べることになり、栄養や味の面でも健康的なものより劣ります。慣行農法でも有機農法でも、施肥の管理がうまくいけば、おいしくて健康的な作物を生産できますが、熟練の技が必要になると思います。一方、自然農であれば、しっかりと自然に寄り添うことで、人為によらずとも自然の力で生態系のバランスが取れていくのです。

消費者の意識改革が求められる

慣行農法をされている農家さんとお話をしていたとき、「本当は農薬なんて使いたくないが、虫食いがあると誰も買ってくれないから使わざるを得ない」とおっしゃっていました。その農家さんの野菜は非常に健康的に育っており、私もいただきましたが大変おいしかったです。ですが、ほんの小さな穴が開いているだけで売り物にならなくなってしまうというのが現実です。

わずかな虫食いは健康な作物であっても起こり得ます。私たち消費者がそれを容認しないと農薬を止めることはできません。自然農により消費者の意識を改革し、皆が健康な野菜を手にすることができる時代が来ることを願って、微力ながら発信を続けたいと思います。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次