続・自然農とは? -有機農法との本当の違い-

農法論

2021/2/27 公開

過去記事において、自然農、有機農法、慣行農法の違いについて述べました。慣行農法は化学肥料や農薬を許容する農法なので、この違いは明らかです。しかし、有機農法と自然農(法)の違いは、あいまいに感じるところがあります。ここでは、この違いについて、もう少し詳しく述べてみます。

英語ではどちらも「オーガニック」

以前イギリス人の知り合いに、私が取り組んでいる自然農について話したことがあります。するとそのイギリス人は「それはオーガニックだね」という反応でした。当時私は有機農法との違いを説明したかったので、「有機肥料すら使わない」、「外から資材を持ち込まず、畑の中のものだけを循環させる」などと説明しました。しかし、「それこそまさにオーガニックだ」と言うのです。

自分の英語力が足りないからうまく伝わらないのかとも思ったのですが、どうもそうではなさそうです。Wikipediaで自然農法の英語のページを探すと「Natural farming」という記事が出てきます。ところが、そこに記載されるのは福岡正信氏や川口由一氏の、日本発祥の農法がほとんどを占めています。福岡正信氏の「わら一本の革命」の英訳版が出版されているので、言葉としては英語になっていますが、概念として欧米に浸透するまでにはなっていないと思います。

福岡正信氏の解釈

福岡正信氏の著した「わら一本の革命」の中で「自然農法と有機農法」という項目がありました。農協の研究所で自然農法に関する研究会を作ったときに、その会の名称は「有機農法研究会」となったそうです。福岡氏は「自然農法研究会」という名称を提案したそうですが、宗教色が出てしまうのでということで、そのままになったそうです。(当時自然農法と言えば世界救世教という宗教団体が取り組む農法という印象が強かったようです)

福岡氏は名称が「有機農法研究会」となることで、欧米式の科学的な一農法になってしまうのではないかという一抹の不安があったようです。福岡氏は自然農法とは「単に作物を作るだけじゃなく、人間完成のための農法」と述べられています。この危惧は現代においてある意味あたっている部分もあると思います。

自然農は肥料を使う?

自然農と有機農法の違いとして、有機肥料を使うかどうかがあります。自然農は無肥料が原則ですが、川口由一氏の提唱する自然農では「補い」という概念があります。「補い」とは、土の養分が足りない時に、米ぬかや油粕などを少量施すことです。これは、自然農に切り替えた直後に必要な場合が多いですが、次第に減らしても育つようになっていきます。

施すものは、自分の生活の範囲で出たものとされ、肥料とは区別されています。外部の物資に頼らず持続可能な農業を目指すということで、安心感を得ることができます。

では、有機農法はどうでしょうか。有機農産物の日本農林規格により肥培管理について「圃場やその周辺に生息、生育する生き物の機能による方法によってのみ農地の生産力の維持増進を図る」と定められています。ただし、これだけだと営農が難しい場合には、別に定めた肥料の範囲なら使ってよいとも記載されています。

規格の前半部分は自然農の考え方に非常に近いです。つまり、自然農では上記規格の後半部分の例外規定を使わないで実施する農法ということもできます。ただし、それだけだと福岡氏の危惧する「科学的な一農法」に陥ってしまう可能性があるので、自然との寄り添い方、自分の生き方についてもしっかりと考える必要があると思います。

パーマカルチャー

本サイトのサブタイトルにもなっているパーマカルチャー(Permaculture)という言葉あります。これは、永続的(Permanent)と農業(Agriculture)を組み合わせた造語です。3つの倫理と12の原理があり、自然農と通じる部分が多いです。また、最近では「永続的(Permanent)+文化(Culture)」という解釈により、個人、社会、経済等にまでその考え方の適用範囲が広げられています。

なお、この記事内では、自然農と自然農法という言葉を意図的に混在して記載しました。今後この違いについても記載したいと思います。

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