有機農地2050年に25%へ 農水省の農業戦略について思うこと

農法論

本日(2021/3/5)、有機農業用の農地を全体の25%まで増やす目標を盛り込んだ農業戦略を農水省がまとめたことがニュースで報じられました。環境への関心の高まりに応じる形になっていますが、この政策が本当に環境の改善のためになるのか、よく考える必要があると思い、ここで取り上げました。

農業戦略の概要

ニュースで報じられた戦略は以下の通りです。

  • 除草ロボット
  • AIを活用した土壌診断システム
  • 低コストで有機肥料を作る技術

上記の技術開発に助成し、手間をかけずに有機農業をできる環境を整備するというものです。これらの戦略により有機農地が増えた場合、本当に環境改善に貢献するのでしょうか?

除草ロボット

除草は大変な重労働であり、除草剤の使用が許されない有機農家にとって、除草ロボットがあれば、効率化につながると思います。しかし、ロボットが作業できるようにするには、畝の形状や作付け方法などを、ロボット側の制約条件に合わせる必要があると考えられます。そのような環境を整えるためにさらに設備投資が必要になってしまいます。

それを防ぐために、多様な作業環境でも機能させようとすると、より高度な判断プログラム(AIなど)が必要になります。

ロボットを生産するためには工場が必要となり、故障したり役目を終えると産業廃棄物となります。

AIを活用した土壌診断システム

このシステムは、おそらく土壌を物理、化学、生物学的に分析し、そのデータから最適な施肥設計をするようなものだと思われます。より具体的には、土壌の分析データとその時の作物の品質、量の組み合わせをAIに学習させ、ビッグデータを構築し、対象の土壌の分析結果から、品質、量を最大にするために施す肥料の種類と量を提案するようなシステムだと思います。

しかし、気温、降水量など不確定な要素が多く、栽培中の管理方法なども含めると膨大なパラメータになります。それらのデータを学習させ最適な解が出せるのか、今後の開発が待たれるところだと思います。

低コストで有機肥料を作る技術

これについては、何をしようとしているのかよくわかりません。有機肥料を売る企業や農協などが儲かる仕組みを作ろうとしているだけにしか見えません。その開発のために助成金が出るとすれば、利権が絡んでいるとしか思えないです。

何のための有機農業か?

結局、環境への関心の高まりを利用して、一部の企業を儲けさせる取り組みのように見えてしまいます。それでも経済効果という意味では一定の効果はあるかもしれませんが。

環境のことを本当に考えるならば、上記の技術の導入に投じたエネルギーを回収できるかを考えなければなりません。私にはとても回収できるとは思えません。

農薬、化学肥料を使用しないということが目的となって、そのための弊害をテクノロジーで解決しようとするのであれば、何のための有機農業かがわからなくなってしまいます。であれば、適切に農薬、化学肥料も併用する方が、よほどましだと思います。

自然農ができること

自然農では土壌は自然が作ると考えるので、施肥設計という概念がありません。AIに頼らずとも、自ずからその場所、気候に最適な土壌環境になっていくと考えます。外から資材を持ち込まないため、有機肥料の低コスト化も不要です。そのままでほぼノーコストです。除草ロボットはあったら便利かもしれません。しかし、どのような草が生えるかを観察することで、畑の状態を理解するため、草刈りの労力は惜しむべきではないと思います。

現在、有機農地は全体の約0.5%。自然農地となれば、さらに少ない面積しかありません。機械化ができないため、一人の農家さんが耕作できる面積に限界があります。したがって、自然農による食料供給の寄与は非常に小さいです。

上記の政策が有機農業の大規模集約化だとすれば、自然農は小規模多様化と言えます。自然農に興味を持つ人が一人でも多く自ら食料を生産し、少しずつでも自然農の作物の流通量が増えることを願ってやみません。私も微力ながら貢献していきたいと考えています。

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